ブリマー・ブルーイング~スコット・ブリマー インタビュー その4/欲しい素材、環境がいつでも手に入ることはない!

限られた条件で最良のビールを作る…それが腕の見せどころ。

―新しいビールのレシピを考えるときに、仕上がりのイメージはどれぐらいあるものなんですか? 素材選び、ホップの投入タイミング、煮沸時間とかを考えて『これぐらいだと、こうなるはずだ』というアイデアと出来上がりとの間に差というのはあるものなんですか?

SB 味、香り、フレイバーの当初イメージが仕上がりと違うということはあんまりないね。概ね、当初の狙い通りになっていると思う。さっきも言ったけど、ウチみたいに小さいブルワーの場合は、その時に手に入れられる材料によって作れるモノが決まってきちゃうんだよ。そこで実現可能なスタイルを考えてレシピ作りにとりかかる、という流れ。仕上がりのイメージもそこでできる。

新しいモノ、まあ、ウチの場合はスペシャリティ、なんだけれど、大体1つの素材から始まる。このモルトから、だったら何を作ることができるか、この新しいホップだったら、その特徴を生かすにはどういう組み合わせがいいか…を考える。いつでも、欲しいホップ、モルトを購入することってできないんだよ。似たような特徴の違う素材で、実現したいビアスタイルに近づけようとする、なんてしょっちゅう。

―昨年、カリプソというホップで初めてベルジャン酵母を使いましたよね? あれも、そういう背景があってのこと?

SB そうだよ。あのホップは良かった。洋ナシの香りを最大限に生かすための素材、組み合わせでベルジャン酵母を思いついた。初めて使ったけど、悪くなかったでしょ?(※2018年2月のスペシャリティ アメリカン・マイルド・セゾン)要は、大規模ブルワリーなら1年分のモルトとホップを大量に年間契約できるけど、ウチみたいなブルワリーには資金的にも保管スペース的にもそれは無理ってことなんだ。だから、その時々で工夫する。それが理にかなっているし、実際、そうしている。材料の輸入代理店も、今はけっこうあって、常に必要なものがない、というようなわけではないけれど、常に調達できる、というような状態でもない、という感じ。だけど、それはそんなに悪くないよ。不利だと思うこともあんまりない。代用できることってけっこう多いよ。

―冬になったので、カキにぴったりのどろりとしたスタウトを作ろう、みたいな発想はありますか?

SB ない。考えているのはビールの味と完成度だけで、あとはレストランの工夫に任せたいよ。こんな素材が手に入って、理にかなった料理方法を発見して、お客さんの好みを聞いてフードペアリングを考える…それって、アナタの仕事(笑)。でしょ? 僕の仕事の楽しさはまた別のところにあるよ。

ペールエール、ポーターはちょっとずつモデルチェンジ

―このブルワリーを立ち上げる時から、定番は今のゴールデンエール、ペールエール、ポーターと決めていたんですか?

SB いや、ホントはもう一つ入れたかった。それはカリフォルニア・コモン。大好きなビアスタイルで、毎年、8月の終わりに作ってるんで、知っている人もけっこう多いかな。評判もいいし、定番にしちゃえ、という周囲の声もある。できることなら、定番にしたかった…けれど、大部分の日本の人たちにとってはあまりになじみのないものだし、これを定着させるのはちょっと難しいと思う。今のところはね。

※注:カリフォルニア・コモンは北カリフォルニア特有のビアスタイル。ラガー酵母を限界まで高い発酵温度で活動させて醸造します。ラガーのスッキリしたのどごしとエールのふくよかなコクを併せ持つのが特徴。19世紀、北カリフォルニア サンフランシスコ周辺に金を求めてやってきた男たち向けにビールを醸造して売ろうとしたのが発祥と言われています。ところが、当時、五大湖周辺から持ってきた酵母はラガー用~ラガー酵母の活動適温は5度から10度くらい、いっぽうエールビールの酵母は15度から25度くらい。19世紀なので、冷蔵庫はありません。温暖なカリフォルニアでラガー? 無理じゃん…いやいや、10度くらいってのは微妙にいけるんじゃない? っていうことで、強引にやってみたらできちゃいました。しかも、これがキレとコク、ホップの香りもふくよかな絶妙バランスの素晴らしいビールになった。というのがてんまつです。このビールを作ったのがアンカー・ブルーイング。下面発酵といって、発酵タンクの下のほうからじっくりと発酵が進むのが特徴のラガー酵母ですが、活動できる限界高温で発酵させたところ、酵母は激しく活動、ものすごい勢いで発酵タンクの上面まで噴き出すように発酵するところから、「スチーム(蒸気)ビール」とアンカー社は名付けました。スチーム・ビールはその後、アンカー社の登録商標となったために、製法は同じでも、他社が名前を使うことはできないので、このスタイルのビールはカリフォルニア・コモンとなっています。アンカー・ブルーイングは全米で最も歴史のあるクラフトビール・ブルワリー。シェラネヴァダ創業のケン・グロスマンさん、ストーン・ブルーイング創業のグレッグ・クックさん、ローグ・エールのヘッドブルワー、ジョン・マイアーさん、などアメリカンクラフトビール界の重要人物に影響を与えてきました。もちろん、今でも活躍中です。

―3つの定番はスタート当初からレシピは変わっていませんか?

SB ポーターはかなり、変わった。実験的な試みもやったし、また、もとに戻したり、そこからまた少し変えたりしている。

―かなり、味が変わったので、分かります。なぜ、変えようと思ったんですか?

SB より、モルティに。より、ロースティにしてみたかった。だけど、酒税法上の問題もあって、二転三転したんだよね。ゴールデンエールは、ほとんど変わっていない。ペールエールについて言うと、実は昨年からほんの少しづつ変えている。IBUをちょっとずつ高くしているんだよね。

―あれ、そうですか? 理由は?

SB うーん、もう少しホッピーにしたほうが良いと思った。アメリカンペールエールに慣れてきた人も増えてきたみたいだし。

IPAに近づいてきている?

SB そう。結局ね(笑)。誰も気が付かないみたいだけど(笑)。

―使っているホップは同じ?

SB 同じ。センチニアルとカスケードだね。

IBUは?

SB 35から37~38。数値的にはあんまり変わっていないと思うよ。でも、今やほぼIPAだね。

※スコットさんの話はまだ続きます。明日以降もさらに更新していきますよ! インタビューの内容は「メニュー」→「4周年記念! スコット・ブリマーインタビュー」で、最初から通してご覧いただけます。

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