ブリマー・ブルーイング~スコット・ブリマー インタビュー その3/ホンモノを作る
醸造所創設。最初に入れた発酵タンク。施設を拡充した今も現役です。

最新流行のスタイルを追いかけることには興味がない。

―今、関心のあるビアタイルはありますか?

SB うーん、今のところは。

―ない?

SB というより、ウチみたいな小規模だと、次はコレを作りたい、といっても制限があるんだ。材料の買い付けの問題だね。いつでも、欲しいホップとかモルトが手に入るとは限らない。とくにホップ。人気のあるホップは規模の大きいブルワリーが年間契約で大量に買い付けてしまうんで、欲しいモノを必要な量だけ、こちらのタイミングで手に入れるというわけにいかない。だから、そのとき手に入る材料で何か楽しいものを考えるというやり方。

―クラフトビールには、流行がありますよね。例えば、今の最先端はブリュットだし、ニューイングランド/ヘイジーIPAも相変わらず大人気。サワーエールにもファンがいます。こういうものに興味がありますか?

SB ない(笑)。今はIPAがカッコよくて、次の月にはサワーエール、さて、次は何だ? もっと違うもの、目新しいものは? 何が人気? いけてるのは何だ?という人たちに向けてビール作りをするのではなくて、ああやっぱりこのビールは美味いねえ。コレがいいなあ、というお客さんを増やしていきたい、というのが僕の目指すビジネスモデル。個人的にもクラシックスタイルが好きだね。

―その考えを持つようになったのはいつから?

SB 特別なきっかけがあったわけではないよ。ただ、エクストリームなビールを求めるお客さん向けに最新流行のクラフトビールを次々に作っていく、というのは僕のスタイルじゃないってこと。ハヤリのもの、人気のあるもの、をどんどん作って消費してもらう、というのではなくて、週末にいつものお気に入り、を楽しんでもらう、その中にウチのビールがある、というのがビジネスモデルとしても、僕の理想なんだよね。

2015年5月7日 フジマルクラフト開店1週間前。ビールサーバー
の設置を手伝って(というか、ほとんどやってもらった)もらった時のスナップ。もちろん、こちらも現役です!

ドライホッピングをしない理由

―自分のお気に入りのビアスタイルはペールエール?

SB どこのブルワリーか、という意味? それとも一般的なビアスタイルという意味?

―ビアスタイルという意味。

SB うーん、とくにコレ、というのはないんだよね。バランスが取れていて、ビアスタイルの定義の中で良くできた、完成度の高いものが好き。実験的なもの、例えば、IPAだと、すごくハイアルコールなものだったり、極端にニガイもの、とかだったらセッションIPAのほうがいい。

ウチの3つの定番は、その考えを反映させているよ。ゴールデンエールはクラフトビールになじみのない人たち…フツーの日本のビールしか飲んで来なかった人たちにも飲みやすい。ペールエールは通常、アメリカンクラフトビールのブルワリーではベンチマーク。そのブルワリーの判断基準になるビアスタイルでとても重要。初めて行くブルワリーで、まず試すのはペールエールなんだよね。これが美味しいブルワリーなら、まず、他のシーズナルも美味しいよ。だから、クラフトビールをいくつも試したことのある人も、それから最近、大手のビール以外にも美味しいビールがあるぞ、と気づき始めた人のことも想定している。ポーターはクラフトビールファンの間ではかなり、評価の高い定番だけど、どちらかというと、クラフトビールを飲みなれた人を想定している。飲み口も重いしね。

―今、東京とその周辺にはものすごい数のクラフトビアバーができていて、マニアと言えるような人も増えてきているように実感します。3年前にはそれでよかったかもしれないけれど、今は副原料を使ったり、斬新なドライホッピングの方法や原料を使うスペシャリティ・ビールも必要なんじゃないかな、と思います。それについてはどう?

SB ドライホッピングに関しては、ライセンスの問題。発酵終了後のタンクに何かを投入すると、それは発泡酒ということになる。ウチはビール免許しかないので、できない。

―去年の春に酒税法が改正になったでしょ。発酵終了後のタンクにホップを投入するドライホッピングは、『ビール』として認められるのでは?

SB いや、できないよ。

―発泡酒免許を取得するつもりはないんですか?

SB ああ、それはねえ。ヨシコさんが決める(笑)

―どういう意味?

SB ブリマー・ブルーイングの代表取締役は妻のヨシコさん。だから、ヨシコさんが発泡酒免許を申請して、やれ、と言われれば、僕はやるよ(笑)

―いやいやいや。そこはですねえ。ええと…

SB オーケー、ちょっと説明するね。このブルワリーを立ち上げる時に、発泡酒免許とビール免許のどちらかを選ばなければいけなかった。発泡酒免許ならば年間6000リッターの製造でOK。ビールならば6万リッターが必要。発泡酒免許のほうがカンタンなのは分かってたよ。だけど、周囲がどうとらえるかというのは重要な問題だった。クラフトビールの業界の人間なら、日本の酒税法は理解してくれているから、別にどちらでも構わないんだけど、そうでない人たちは、『ああ、発泡酒免許ね、ちゃんとした、本物のビールは作ってないんだ』と、思うでしょ?

―でも、年間6000リッターと6万リッターの差は大きいですよね。

SB 大きいよ。酒税も沢山払わなければいけないし、正直なところ、かなりきつい。それでも、ビール免許でスタートして『ちゃんとした、本物のビールを作る醸造所』という評価がどうしても必要だった。もし今、醸造所を立ち上げるとしたら、両方とも取得するだろうね。

シェラネヴァダ・ブルーイング 「トーピード・エクストラIPA」のドライホッピング用タンク内。収穫したホールホップ(生ホップ)を容器内に詰めて、この中を発酵の終わったビールが通り、また発酵タンクへと戻っていく。
トーピード用タンクの外観。このドライホッピング用タンクの姿が魚雷(TORPIDO)に似ていることから、トーピード・エクストラIPAと命名された。アメリカンIPAのマスターピースです。(写真提供 上下ともにナガノトレーディング)

―じゃあ、今、どちらの免許も持っていたとしたら、トーピード(※シェラネヴァダ・ブルーイングのIPA )みたいなIPAを作る?

SB うーん、それには別の問題があるなあ。発酵の終わったタンクから、ドライホッピング用のタンクにビールを移動させる必要があるでしょ。そのスペースはとてもとれない。材料の保管場所とかもね。ドライホッピングをするために必要な施設と場所がないってのが現状だね。

―条件が揃えば、ドライホッピングもやりますか? トーピードのタンクは、何というか、カッコいいですよね…。

SB そうね。ドライホッピングに関していえば、興味がないわけではないんだよね。絶対にやらない、と決めているわけではないよ。でも、施設と状況が今のところ揃っていない。

そもそも、僕はトーピードのプロトタイプを飲んでるんだよ。夜のシフトの時にチェックしたんだ。シェラネヴァダ・ブルーイングにいたころ、プロトタイプができたんだよね。製品化して、出荷するころには、日本にいたんだけど。シェラネヴァダのトーピードへの取り組みはずっと見てきていて、大体知っているんだ。他にも、いろいろとプロトタイプはあって、そのころ、実験醸造でできた製品はほぼ飲んでる。まあ、どれも素晴らしかったけどね。

※スコットさんの話はまだまだ続きます。第四弾もビール作りについて。スコットさんのビール醸造スタイルをさらに掘り下げていきますよ! お楽しみに! インタビューの内容は「メニュー」→「4周年記念! スコット・ブリマーインタビュー」で、最初から通してご覧いただけます。

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